「伝統野菜は長老に聞け! 」~小林五郎氏の“ツマモノ”の魅力について~

大好評の”伝統野菜は長老に聞け!“シリーズ。 第4弾は、”ツマモノの魅力”と題し、足立のツマモノ農家の栽培指導を長年された経験のある小林五郎氏を講師に迎えて、8月23日、JA東京南新宿ビルで開催されました。
今回もはやばやと満席になり、43名の方がご参加くださいました。

受付脇のテーブルに採りたてのツマモノと試食用の内藤カボチャの丸焼きを展示。皆さん、さっそくパチリ。
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左から、奥多摩わさび、鮎タデ、アサツキ、紫芽、内藤カボチャ、つる菜、大豆の青梅在来。

 

納所副会長より挨拶、福島氏による司会で開講いたしました。

P8231725-thumbnail2講演前半は小林氏の自己紹介から始まり、足立のツマモノとその生産者とのかかわりをご紹介いただきました。アサツキやワケギとワケネギとの違い。シソの花穂、穂ジソ、紫芽、青芽、大葉に関したお話。 ツルナ、小松菜の高い栄養素。健康な土づくりの為の肥料や病害虫対策など、安心・安全・新鮮なツマモノ生産の為に、多くの経験をされた小林氏ならではの講演が続き、皆さん真剣に受講されていました。

続いて大竹会長より、江戸東京野菜に今年度決定予定の6品目を紹介。 今回試食に使われた内藤カボチャも含まれ、合計40品目となります。

試食・休憩タイム
上原さんより試食用に料理したメニューの紹介。
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奥多摩ワサビご飯
ご飯に鰹節と醤油をかけ、おろしたての奥多摩ワサビを上に添えました。
築地・安達屋の木綿豆腐に紫芽と刻んだアサツキを散らしました。

紫芽のクレープ
クレープを焼くときに紫芽を散らし、サワークリームとスモークサーモンを巻きました。

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紫芽とアサツキの冷奴

 

 

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内藤カボチャの丸焼き
内藤カボチャをクッキングホイルで2重に巻き、オーブンでじっくり焼きました。

*紫芽:足立の宝谷さん
*アサツキ:越谷産
*内藤カボチャ:西東京市の矢ケ崎さん
各自、プレートにとり、席で試食していただきました。

講座後半は、大竹会長の用意したツマモノ生産者のスライドに沿って、はまぼうふう・紅タデ・芽カブ・伝統小松菜の菜花など、繊細な収穫作業や梱包方法も含めてお話しいただきました。
その後質問タイムが設けられ、紫芽や山椒の栽培における問題点の質問や、今後の普及促進などに関する質問が続き、小林氏から解決策や具体例を挙げながら丁寧な回答をしていただきました。
P8231806-thumbnail2福島氏が11月の総合コースの案内をし、納所副会長の挨拶で閉講いたしました。

17時からは場所を新宿美禄亭に移動して懇親会が行われ、小林氏も含め17名のご参加がありました。

ありがとうございました。

大竹先生のブログ~江戸東京野菜通信~
http://edoyasai.sblo.jp/article/102754679.html

「伝統野菜は長老に聞け!」~渡戸章氏の練馬大根は俺に聞け!~

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今回も満席と大好評の”伝統野菜は長老に聞け!“シリーズ。 第3弾は、”練馬大根は俺に聞け!”と題し、練馬大根栽培の第一人者である渡戸章氏にご登壇いただき5月31日に東京アグリパーク(JA東京南新宿ビル)で開催されました。

渡戸さんは練馬区平和台で江戸時代から代々続く農家の長男として昭和9年に生まれの御年80歳。一時期途絶えていた練馬大根の栽培の復活に23年前から取り組み、現在は年間3000本以上を作り、また都内小学校などでの食育にも活動の範囲を広げていらっしゃいます。

自己紹介の後、練馬大根はいつごろ誰が作り始めたかの誕生伝説から話に入り、葉も含めた形の特徴や栽培の時期・肥料に関しての興味深い話が続きます。
今から260年ほど前には、練馬大根の名で種も各地方に出回っていたことを裏付ける文献も紹介いただきました。
02R-thumbnail2沢庵漬で多くの需要があった練馬大根も、昭和30年代以降は需要が減り、ついに生産が途絶えました。
そこで、練馬区は伝統的名産として復活の育成事業を始め、渡戸さんも以前の採種の経験をもとに、23年前から栽培に取り組まれています。 より良い種を取るための母本選定の繰り返しや栽培の工夫で、ようやく元来の質の良い練馬大根が出来るようになったそうです。

渡戸さんご自身は、これからも伝統の練馬大根をつくり、種を採り続けていく。と大変お元気ですが、将来もこれを守り続ける後継者の問題が気がかりであり、より多くの人に練馬大根の魅力を認知してもらうための宣伝も重要だと語っていらっしゃいました。

前半の講演は終わり、休憩のあと、お楽しみの試食タイム。
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食べ比べには3種のゆでたキヌサヤと生の汐入ダイコンをご用意。すべて固定種栽培。
川口エンドウ:八王子の草木弘和さんが栽培
日本キヌサヤ(白花):当協議会 福島さんの畑から
赤花キヌサヤ:当協議会 福島さんの畑から
汐入ダイコン:小平の宮寺光政さんの畑から。早めの間引きになってしまったのを、この講座のために畑に残しておいてくださいました。
食べ比べ、試食は今回も上原さんです。

・川口エンドウとメイクインの切り胡麻あえ
蒸した鶏ささみ・細切りでさっと湯通ししたメイクイン・ゆでて細切りにした川口エンドウを、三杯酢と切り胡麻であえたもの。
・赤花キヌサヤとシラタキの塩オカカあえ
ゆでた赤花キヌサヤと空炒りして軽く下味をつけたシラタキを胡麻油で炒めたオカカと塩で調味したもの。
・汐入ダイコンと油揚げの炒め煮
細切りの汐入ダイコンとさっとゆでた葉っぱを油揚げと炒め煮したもの。
・汐入ダイコンの生
中ほどの部分を皮ごと放射状に切ってあり、皮の部分の辛みと中心部の味の違いを味わえるもの。

<参加者のご感想>
食べ比べについては
キヌサヤは3種とも見た目は似ているが、それぞれの食感や風味の違いが面白かった。
こんなに違いがはっきり分かるとは、と驚きました。

試食も素材を生かした調理や味が大好評で
キヌサヤと塩おかかが絶妙にマッチして、素材の力と風味の演出が素敵でした。
川口エンドウとメークインの和え物がおいしかったのでレシピ教えてほしい。
3品ともぜんぶとても美味しかったので何度もお代わりしました。
などの感想が寄せられました。
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東大農場技術職員の手島さんが、馬込半白キュウリと高井戸節成キュウリを持参。それぞれの特徴を皆に解説していただきました。
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大根を洗ったり、干す前に皮をむくために使われた鮫の皮の展示に皆さん興味津々。

 

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講演後半は、大竹会長が用意した練馬大根に関する写真資料に沿って、会長の質問に渡戸さんが答えながら講演が進められました。
まずは種の播き方からはじまり、収穫から沢庵漬けにするまでの工程を、最盛期の写真や資料のスライドを使いながら分かり易く解説。

種まき:歩幅で足跡を畑に付けて、種と肥料を…
収穫:昔は、11月20日頃までには抜いて…
大根の切り方:葉としっぽの切る位置は…
洗い方:小判型の洗い桶で鮫の皮を使って…
干し方:荒縄で5、6本ずつ横向きに吊るし…
漬け方:樽への詰め方は…、糠と塩の比率は…、沢庵石の置き方は…

また、最盛期には多くあった種屋の話や、その頃の販売・運搬方法など興味深い話も聞くことができ、経験豊かな長老ならではのお話に、みなさん楽しく聞き入っていました。

JAあおばから、練馬大根の種(10粒入り)の提供があり、希望者へのお土産として配られました。09-thumbnail2

講演後の懇親会には、渡戸さんも交えて18名の参加者。
皆、江戸東京野菜を話題に、時間を忘れてヒートアップ。

渡戸先生、ご参加の皆様ありがとうございました!

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「伝統野菜は長老に聞け!」~澤地信康先生に学ぶ東京特産野菜の足跡~

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2月に雪のため延期になった企画ですが、今回も40名を超える皆さんの申し込みがあり、生産者の方々にもご参加いただきました。
澤地先生は昭和3年に杉並区桃井で生まれ、ご実家は享保年間から農業を営んでいらっしゃったとのこと。

幼いころの記憶では家族総出で畑仕事をし、両親は夜遅くまで大根を連にしていたそうです。
家には外国の野菜のタネのカタログがあり、それを見て育ったので野菜に縁があったのだろうとおっしゃっていました。
その後、千葉大学の園芸学科に進学し、東京都の農業試験場参事研究員として勤められました。

そして20年前から現在に至るまで、ビルの屋上でさまざまな野菜を栽培していらっしゃいます。
今回は先生の豊富な経験と知識の一端をお話いただきました。
まずは、野菜の歴史についてのお話です。

昔は今でいう野菜を蔬菜(そさい)と呼んでおり、野菜は野からとってくるものだったが、昭和30年代に野菜という呼び名に統一されていった。

太古からの日本原産の野菜は12種類で、中古、近古、近世を経て現代では150種類に増えた。
主に南米、中米からわたってきたもので、ジャガイモなどは原種は小さく苦かったものが改良されながら日本にわたってきた。
その流れは、ジャガタラから名づけられていること。またサツマイモは南にいくほど、琉球芋、唐芋と呼び名の変わりかたをたどっていくとその流れがわかる。
キュウリの原産は見つかっていないが、紀元前からあり、ヒマラヤあたりからヨーロッパに渡り、人の流れとともにシルクロードを経て日本に入ってきたと思われ、白いもの、緑のものがある。新宿御苑の福羽逸人の文献にもキュウリが載っており、主にピクルスにして食べていた。江戸のキュウリは京都から来て、小さいものが多かった。
高井戸キュウリは苦味があるので、種を採る際には苦味の少ないものにしていった。
丈夫なものにしていくためには、同じ蔓ではなく、隣の蔓から受粉をすることもしていた。
大根は高倉大根と練馬大根をかけて採種し、ウイルスに強いあずま大根を作った。

これらの先生のお話から、野菜の歴史は古く紀元前からあり、栽培しやすいよう、食べやすいように改良されながら人の動きとともに伝わってきたということがわかりました。

ここで休憩時間となり、上原恭子さんによる試食タイム。
今回は生産者の方々とお話ししながらの楽しい時間となりました。

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~試食リスト~
<相模半白節成キュウリ(平塚市 城島園芸)>
・相模節成半白キュウリ(生での試食)
・相模節成半白キュウリのハニーマスタードあえ
軽く塩をして水気を切った相模半白節成キュウリをハニーマスタードソースであえました。

<熊本長ニンジン(熊本 清正農園)>
・熊本長ニンジンのたたきニンジン
地元熊本でおすすめの食べ方「たたきニンジン」、ゴボウで作るのと同じに作りました。

<ノラボウ菜(西東京市 矢ヶ崎農園)>
・ノラボウ菜の茎の昆布〆
甘くて美味しいノラボウ菜の太い茎だけをゆでて、美味しい塩と昆布で昆布〆にしました。
・ノラボウ菜の生キムチ
細い茎と葉の部分をゆでて、サラダ感覚で食べられる生キムチにしました。

<金町コカブ(西東京市 矢ヶ崎農園)>
・焼き金町コカブのマリネ
8分通り火を通した金町コカブを赤い柚子胡椒でマリネしました。
休憩後は屋上菜園についてのお話です。
澤地先生は屋上にプランターではなく、直接土を置いて畑にしていらっしゃいます。
屋上緑化をすすめ、雨水で水やりをするなど環境にも配慮しているとのこと。
土を直接置くと心配なのは雨漏りですが、土を置くことでコンクリート表面の温度が安定し、かえって耐久性が上がることが分かったそうです。

建築基準により土は17~18cmくらいの深さしか置けませんが、そこで40cmの長さのある大根も栽培されているというのには皆さん驚いていました。
なぜかといえば、秋大根は抽根性で根の半分くらいは地表に出ており、20cmくらいの深さがあれば40cmの大根も十分育つということです。

「ごぼう以外は何でも栽培しています」とおっしゃるように、夏にはビルの屋上で10Kgを超える甘いスイカが実り、連作ができないといわれているエンドウ豆も毎年同じ場所で豊作になっていることなど、普通では思いもよらないことですが、澤地さんの知識と技術によってこそ成し遂げられているのだと思いました。

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質疑応答では、多数の質問が寄せられ、専門的な質問にも丁寧に答えていただきました。
最後に希望者は先生が執筆された「江戸東京ゆかりの野菜と花」にサインをいただきました。
いろいろな試みを楽しんでいらっしゃるという澤地先生、これからもお元気で野菜を作り続けていただきたいと思います。

どうもありがとうございました。

大竹先生のブログ~江戸東京野菜通信~の関連記事
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NPO法人 江戸東京野菜コンシェルジュ協会

NPO法人 江戸東京野菜コンシェルジュ協会は、東京の伝統野菜である江戸東京野菜の普及とそれによる地域振興を目的とし、都市農業、食育などにかかわる人材育成に取り組んでいます。