「伝統野菜は長老に聞け!」~澤地信康先生に学ぶ東京特産野菜の足跡~

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2月に雪のため延期になった企画ですが、今回も40名を超える皆さんの申し込みがあり、生産者の方々にもご参加いただきました。
澤地先生は昭和3年に杉並区桃井で生まれ、ご実家は享保年間から農業を営んでいらっしゃったとのこと。

幼いころの記憶では家族総出で畑仕事をし、両親は夜遅くまで大根を連にしていたそうです。
家には外国の野菜のタネのカタログがあり、それを見て育ったので野菜に縁があったのだろうとおっしゃっていました。
その後、千葉大学の園芸学科に進学し、東京都の農業試験場参事研究員として勤められました。

そして20年前から現在に至るまで、ビルの屋上でさまざまな野菜を栽培していらっしゃいます。
今回は先生の豊富な経験と知識の一端をお話いただきました。
まずは、野菜の歴史についてのお話です。

昔は今でいう野菜を蔬菜(そさい)と呼んでおり、野菜は野からとってくるものだったが、昭和30年代に野菜という呼び名に統一されていった。

太古からの日本原産の野菜は12種類で、中古、近古、近世を経て現代では150種類に増えた。
主に南米、中米からわたってきたもので、ジャガイモなどは原種は小さく苦かったものが改良されながら日本にわたってきた。
その流れは、ジャガタラから名づけられていること。またサツマイモは南にいくほど、琉球芋、唐芋と呼び名の変わりかたをたどっていくとその流れがわかる。
キュウリの原産は見つかっていないが、紀元前からあり、ヒマラヤあたりからヨーロッパに渡り、人の流れとともにシルクロードを経て日本に入ってきたと思われ、白いもの、緑のものがある。新宿御苑の福羽逸人の文献にもキュウリが載っており、主にピクルスにして食べていた。江戸のキュウリは京都から来て、小さいものが多かった。
高井戸キュウリは苦味があるので、種を採る際には苦味の少ないものにしていった。
丈夫なものにしていくためには、同じ蔓ではなく、隣の蔓から受粉をすることもしていた。
大根は高倉大根と練馬大根をかけて採種し、ウイルスに強いあずま大根を作った。

これらの先生のお話から、野菜の歴史は古く紀元前からあり、栽培しやすいよう、食べやすいように改良されながら人の動きとともに伝わってきたということがわかりました。

ここで休憩時間となり、上原恭子さんによる試食タイム。
今回は生産者の方々とお話ししながらの楽しい時間となりました。

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~試食リスト~
<相模半白節成キュウリ(平塚市 城島園芸)>
・相模節成半白キュウリ(生での試食)
・相模節成半白キュウリのハニーマスタードあえ
軽く塩をして水気を切った相模半白節成キュウリをハニーマスタードソースであえました。

<熊本長ニンジン(熊本 清正農園)>
・熊本長ニンジンのたたきニンジン
地元熊本でおすすめの食べ方「たたきニンジン」、ゴボウで作るのと同じに作りました。

<ノラボウ菜(西東京市 矢ヶ崎農園)>
・ノラボウ菜の茎の昆布〆
甘くて美味しいノラボウ菜の太い茎だけをゆでて、美味しい塩と昆布で昆布〆にしました。
・ノラボウ菜の生キムチ
細い茎と葉の部分をゆでて、サラダ感覚で食べられる生キムチにしました。

<金町コカブ(西東京市 矢ヶ崎農園)>
・焼き金町コカブのマリネ
8分通り火を通した金町コカブを赤い柚子胡椒でマリネしました。
休憩後は屋上菜園についてのお話です。
澤地先生は屋上にプランターではなく、直接土を置いて畑にしていらっしゃいます。
屋上緑化をすすめ、雨水で水やりをするなど環境にも配慮しているとのこと。
土を直接置くと心配なのは雨漏りですが、土を置くことでコンクリート表面の温度が安定し、かえって耐久性が上がることが分かったそうです。

建築基準により土は17~18cmくらいの深さしか置けませんが、そこで40cmの長さのある大根も栽培されているというのには皆さん驚いていました。
なぜかといえば、秋大根は抽根性で根の半分くらいは地表に出ており、20cmくらいの深さがあれば40cmの大根も十分育つということです。

「ごぼう以外は何でも栽培しています」とおっしゃるように、夏にはビルの屋上で10Kgを超える甘いスイカが実り、連作ができないといわれているエンドウ豆も毎年同じ場所で豊作になっていることなど、普通では思いもよらないことですが、澤地さんの知識と技術によってこそ成し遂げられているのだと思いました。

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質疑応答では、多数の質問が寄せられ、専門的な質問にも丁寧に答えていただきました。
最後に希望者は先生が執筆された「江戸東京ゆかりの野菜と花」にサインをいただきました。
いろいろな試みを楽しんでいらっしゃるという澤地先生、これからもお元気で野菜を作り続けていただきたいと思います。

どうもありがとうございました。

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