今回も満席と大好評の”伝統野菜は長老に聞け!“シリーズ。 第3弾は、”練馬大根は俺に聞け!”と題し、練馬大根栽培の第一人者である渡戸章氏にご登壇いただき5月31日に東京アグリパーク(JA東京南新宿ビル)で開催されました。
渡戸さんは練馬区平和台で江戸時代から代々続く農家の長男として昭和9年に生まれの御年80歳。一時期途絶えていた練馬大根の栽培の復活に23年前から取り組み、現在は年間3000本以上を作り、また都内小学校などでの食育にも活動の範囲を広げていらっしゃいます。
自己紹介の後、練馬大根はいつごろ誰が作り始めたかの誕生伝説から話に入り、葉も含めた形の特徴や栽培の時期・肥料に関しての興味深い話が続きます。
今から260年ほど前には、練馬大根の名で種も各地方に出回っていたことを裏付ける文献も紹介いただきました。
沢庵漬で多くの需要があった練馬大根も、昭和30年代以降は需要が減り、ついに生産が途絶えました。
そこで、練馬区は伝統的名産として復活の育成事業を始め、渡戸さんも以前の採種の経験をもとに、23年前から栽培に取り組まれています。 より良い種を取るための母本選定の繰り返しや栽培の工夫で、ようやく元来の質の良い練馬大根が出来るようになったそうです。
渡戸さんご自身は、これからも伝統の練馬大根をつくり、種を採り続けていく。と大変お元気ですが、将来もこれを守り続ける後継者の問題が気がかりであり、より多くの人に練馬大根の魅力を認知してもらうための宣伝も重要だと語っていらっしゃいました。
食べ比べには3種のゆでたキヌサヤと生の汐入ダイコンをご用意。すべて固定種栽培。
川口エンドウ:八王子の草木弘和さんが栽培
日本キヌサヤ(白花):当協議会 福島さんの畑から
赤花キヌサヤ:当協議会 福島さんの畑から
汐入ダイコン:小平の宮寺光政さんの畑から。早めの間引きになってしまったのを、この講座のために畑に残しておいてくださいました。
食べ比べ、試食は今回も上原さんです。
・川口エンドウとメイクインの切り胡麻あえ
蒸した鶏ささみ・細切りでさっと湯通ししたメイクイン・ゆでて細切りにした川口エンドウを、三杯酢と切り胡麻であえたもの。
・赤花キヌサヤとシラタキの塩オカカあえ
ゆでた赤花キヌサヤと空炒りして軽く下味をつけたシラタキを胡麻油で炒めたオカカと塩で調味したもの。
・汐入ダイコンと油揚げの炒め煮
細切りの汐入ダイコンとさっとゆでた葉っぱを油揚げと炒め煮したもの。
・汐入ダイコンの生
中ほどの部分を皮ごと放射状に切ってあり、皮の部分の辛みと中心部の味の違いを味わえるもの。
<参加者のご感想>
食べ比べについては
キヌサヤは3種とも見た目は似ているが、それぞれの食感や風味の違いが面白かった。
こんなに違いがはっきり分かるとは、と驚きました。
試食も素材を生かした調理や味が大好評で
キヌサヤと塩おかかが絶妙にマッチして、素材の力と風味の演出が素敵でした。
川口エンドウとメークインの和え物がおいしかったのでレシピ教えてほしい。
3品ともぜんぶとても美味しかったので何度もお代わりしました。
などの感想が寄せられました。
東大農場技術職員の手島さんが、馬込半白キュウリと高井戸節成キュウリを持参。それぞれの特徴を皆に解説していただきました。
大根を洗ったり、干す前に皮をむくために使われた鮫の皮の展示に皆さん興味津々。
講演後半は、大竹会長が用意した練馬大根に関する写真資料に沿って、会長の質問に渡戸さんが答えながら講演が進められました。
まずは種の播き方からはじまり、収穫から沢庵漬けにするまでの工程を、最盛期の写真や資料のスライドを使いながら分かり易く解説。
種まき:歩幅で足跡を畑に付けて、種と肥料を…
収穫:昔は、11月20日頃までには抜いて…
大根の切り方:葉としっぽの切る位置は…
洗い方:小判型の洗い桶で鮫の皮を使って…
干し方:荒縄で5、6本ずつ横向きに吊るし…
漬け方:樽への詰め方は…、糠と塩の比率は…、沢庵石の置き方は…
また、最盛期には多くあった種屋の話や、その頃の販売・運搬方法など興味深い話も聞くことができ、経験豊かな長老ならではのお話に、みなさん楽しく聞き入っていました。
JAあおばから、練馬大根の種(10粒入り)の提供があり、希望者へのお土産として配られました。
講演後の懇親会には、渡戸さんも交えて18名の参加者。
皆、江戸東京野菜を話題に、時間を忘れてヒートアップ。
渡戸先生、ご参加の皆様ありがとうございました!
大竹先生のブログ~江戸東京野菜通信~の関連記事
http://edoyasai.sblo.jp/article/98863875.html
http://edoyasai.sblo.jp/article/94271550.html